◯ 初夏の兼題は「立夏・夏に入る」「芥子の花」「卯浪」です。
【立夏・夏に入る】
海色のインク買い足し夏に入る 天天天地地地人 磨角
草千里牛の長鳴き夏に入る 天天天人人 喜の字
汐の香がふと夏となる橋の上 天天地地地地 菫女
とある朝ぶっきらぼうに夏来る 天天 喜の字
せせらぎに足白く揺れ夏来たる 天地人 雪童
鳴くものは鳴けよ立夏の野に山に 天地 魯斗
前髪をぱつんと切りし夏に入る 天地 小波
ベンチャーズ日本縦断夏来る 天人 音澄
エコファッション立夏で始める丸の内 天 雪童
夏来たり孫と揃いの水着買う 天 風写
【芥子の花】
つけまつげ長き女と芥子の花 天天天人人 呑暮
芥子の花いまは他人の住む生家 天天地地人人 喜の字
罌粟咲くや一筋縄ではいかぬひと 天天地人 菫女
少年の寝ぐせやはらか芥子の花 天地地 磨角
まひる野の乱舞の群れや罌粟の花 天地地 凛語
手水舎の水枯れてをり芥子の花 天地人 見燗
芥子の花風のかたちに揺れてをり 天人人 小波
昏睡の差し伸ぶる手や罌粟の花 天人 凛語
聞き分けぬ子の眉強し芥子の花 天 見燗
芥子の花姑娘の裾割れて見ゆ 天 酒倒
くちびるに軽き挨拶芥子の花 天 磨角
花弁には魔力は見せず芥子の花 天 風写
【卯浪】
恋いくた卯波さ波や泡となり 天天天地人 逆月
白鯨の浮上せぬ日の卯浪かな 天天天 音澄
隧道の狭間に見ゆる卯波かな 天天人人人 酒倒
卯波して大型タンカー持て遊ぶ 天天 喜の字
卯波来て碁石の浜の音となる 天地地地人人 凛語
風止みて揺らぐ思いを卯浪乗せ 天地 好喜
浪々と唱う人あり皐月波 天 見燗
卯波からサーファー出てくる夕間暮れ 天 小波
やむ難く信ずことあり卯波立つ 天人 菫女
田子の浦卯波引き立て空は紺 天 喜の字
★逆月さんの選句と短いつぶやき-------------------------------------------
【立夏】
天 草千里牛の長鳴き夏に入る
地 海色のインク買い足し夏に入る
人 ベンチャーズ日本縦断夏来たる
「阿蘇は大丈夫かな?」悲しいことに、火山の名を聞くと疑ってみる。まこと身勝手な地球不信症候群だ。ここは、一つ、のんびりとした牛たちの「ンもおおお」で夏に入りたい。もっと涼やかに、ピリピリ感を残したまま、夏に来てほしいなら「地」の「海色のインク」をいただきましょう。
人。思春期のワレワレを襲ってきたロックの斬り込み隊、電気三味線かきならし、テケテケテケテケテケテケテケテケと、余白も残さず列島を駆け抜けた!
前髪をぱつんと切りし夏に入る
この句ははじめ「天」だったが、牛に追われて「ぱつん」と枠外へはじかれました。「ぱつん」て、いい音だなあ。男の髪を切っても「ぱつん」とはいかねえなあ。
【芥子の花】
天 芥子の花いまは他人の住む生家
地 手水舎の水枯れてをり芥子の花
人 刈取りも手入れもされず罌粟の花
この植物の毒は、怪しげではない。この植物の毒は、よそよそしい。ヒョロローーと伸びたその上に、不釣り合いに大きな花が乗っている。違和感と、かなり強い怒りとが底にある。天。同じ経験を持つ者にしかわからない、深い喪失の記憶。地もまたしかりだ。
【卯波】
天 卯波して大型タンカー持て遊ぶ
地 卯波来て碁石の浜の音となる
人 逆さ船繋ぎて渡る卯波かな
★小間使いさんから--------------------------------------------------
今回初めて参加の、見燗(みかん)さん、凛語(りんご)さん、
見事な初登場でした。
詳しく紹介するのはカンベンとのことで、女性俳人お二人参加、
と、お伝えしておくことにします。
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