◯ 晩夏の兼題は「盆の月」「オクラ」「墓参り」です。
【盆の月】
移民碑の文字薄れけり盆の月 天天天地人人 見燗
草丈の風呼び寄せて盆の月 天天人 魯斗
野ざらしの目に七十回の盆の月 天天 凛語
実朝の海を照らして盆の月 天地地人人 仲春
盆の月そっと手探る鍵の穴 天地地人 喜の字
御巣鷹は小雨交じりの盆の月 天地 駒吉
止まり木に女がひとり盆の月 天地 喜の字
なつかしい笑顔が集う盆の月 天地 山女
盆の月名残る燈籠消しあぐね 天人 蝸牛
拝むより憶へと亡父母は盆の月 天人 逆月
日めくりに白い丸あり盆の月 天 音澄
盆の月柔肌鎮め風籠る 天 即馳
盆の月水平線に語りかけ 天 好喜
仮装する肌や熱し盆の月 天 凛語
【オクラ】
オクラ摘む雲の切れ間に薩摩富士 天天天天地 喜の字
俎板に小紋を描く秋葵かな 天天地地人人人 酒倒
大砂漠坐してオクラのスープかな 天天人人 喜の字
実をつけて花ほめられしオクラかな 天天人 雨不埒
絵手紙と汁の実になるオクラかな 天地人人 呑暮
産毛立て戦い挑むオクラかな 天地 見燗
朝日ごと刻んで食すオクラかな 天人人 見燗
スムージー父は嫌いなオクラ入 天人 雪童
オクラかよおらぁこいつがきれぇでさぁ 天人 音澄
削り節ねばるオクラを綱わたり 天 酒倒
オクラ斬る世界最小のペンタゴン 天 逆月
オクラ見て女房の機嫌推しはかる 天 愚多楽
【墓参り】
憚らずひとり言する墓参かな 天天天天天地人人 呑暮
山道を揚羽のみちびく墓参り 天天 愚多楽
知も才も父に及ばず墓参り 天地地人 仲春
D坂の猫の先導墓洗ふ 天地人 磨角
波音に父の声聴く墓参り 天地人 喜の字
墓洗う古稀となりたる次男坊 天地 喜の字
墓参り父在る頃の店に寄る 天人人人 音澄
墓参りスマホに戒名記憶させ 天人 雪童
憎しみも濾過され昔墓参り 天人 即馳
墓参り時の栞を刺し直し 天 好喜
芳香の幽かに残る墓参かな 天 駒吉
墓参してすきとほる礼受くるかな 天 凛語
孫おぶう墓参の道の笑い声 天 魯斗
★逆月さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【盆の月】
天 野ざらしの目に七十回の盆の月
地 御巣鷹は小雨交じりの盆の月
人 実朝の海を照らして盆の月
【オクラ】
天 絵手紙と汁の実になるオクラかな
地 オクラの絵安西水丸らしくあり
人 オクラかよおらぁこいつがきれぇでさぁ
【墓参り】
天 山道を揚羽の導く墓参り
地 還暦を越えて腑に落つ墓参り
人 D坂の猫の先導墓洗ふ
私ごとですが、明治生まれの、日本の男女(両親)の育んだ家庭としては、少々風変わりな葬祭・宗教環境にそだちました。
特定の宗教の信仰無し、仏壇なし.遺影もなし。
墓参り、盆帰省、その他お盆のこと、お墓詣りなし。ですので今回のお題は少々苦労しました。
誤解しないでください。そんな家庭の「メンバー」ですが、宗教への関心大、ご先祖様への感謝の気持ち大いにあり、特定ではありませんが、その場に応じて手を合わせるなどするのは何の抵抗もありません。信仰とは言えないかもしれませんが「カミサマ」は、きっといると思っています。
ただ、今の世界各地の状況を見ていると、宗教とは薄く静かに付き合いたいと思います。宗教は熱く過信しないほうがいい。そうおもっています。むろん、そのような国に生まれ育って、熱く信じることが大切な社会があることもしっています。
ただ、昔からお盆というと大変なんだなあと思っていました。
安西水丸さん亡くなられました。見かけると、第一声。「あっ、青野さんだ、僕の友達」。なんど呼ばれたことか。あれはすごい社交術だなあと思います。好きな人でした。
オクラは確かにこの位しか登場しません。でも、人間(じゃないか)、二つも役に立つなら、活きた証し十分ではありませんか。
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