◯ 初冬の兼題は「神の旅」「枯蔦」「残る虫」です。
【神の旅】
再会に訛り飛び交う神の旅 天天天天地 好喜
ちぎれ雲飛び石にして神の旅 天天地地人 芝浜
出雲路は海を右手に神の旅 天天地人人 呑暮
山脈渡る足裏白き神の旅 天天地 青羽
灯篭に雨跡残し神の旅 天地人人 見燗
燠はがし竃の神も旅立ちぬ 天地 仲春
いくたびも折れし路ゆく神の旅 天 磨角
【枯蔦】
モルタルの長屋縛め蔦枯るゝ 天天 芝浜
枯れ蔦に扉も重き酒場かな 天天 逆月
枯れ蔦や脊高き女の暮らしをり 天地 逆月
枯れ蔦に抱かれ眠るや蒸溜所 天地人 青羽
蔦枯れし石の教会光あり 天地 菫女
蔦枯れて沈黙の色写真館 天地人 好喜
一条の枯れ蔦高く幹上る 天人 菫女
枯れ蔦のなお白壁に執着す 天人 音澄
枯蔦の塀に小便するなの字 天人 仲春
枯れ蔦や電球まとい夜を待つ 天 呑暮
枯蔦の細き腕が空掴む 天 仲春
【残る虫】
たたみ屋は更地になりて残る虫 天天天天地 酒倒
残る虫時折止まる砂時計 天天天地 好喜
爪切りの音する夜や残る虫 天地地地人人 呑暮
イアフォンをとればかすかに残る虫 天地地 音澄
島酒の強きをあおり残る虫 天地人 磨角
はたと止むそこにゐたのか残る虫 天人人 菫女
慰霊塔慈しむよに残る虫 天 好喜
そよぎたる草のなかより残る虫 天 仲春
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