◯ 仲秋の兼題は「宵闇」「秋鯖」「稲刈り」です。
【宵闇】
宵闇に忍ぶ二人のスマホ灯 天天天 酒倒
宵闇や下戸は本屋を止まり木に 天天地地人 呑暮
宵闇を貫き消ゆる走者の背 天天人 出船
宵闇や時ごと変わる庭の声 天天 山女
宵闇や石鹸の香とすれ違う 天地地地人 呑暮
宵闇やばくりと割れし胸の蓋 天人 磨角
宵闇に五感冴えるや石階段 天 青羽
宵闇や家庭菜園棒ばかり 天 仲春
【秋鯖】
秋鯖や醤油は玉と弾かれり 天天天天地地地人 呑暮
海の青背に含ませて秋の鯖 天天地地人 青羽
秋鯖やタマの出奔もう五年 天地地人人 酒倒
秋鯖を両手に提げし小長靴 天地地 呑暮
寄宿舎の窓に秋鯖煮る匂ひ 天人人 仲春
山賊が山留守にする秋の鯖 天人人 青羽
秋鯖や懲りぬ酢〆の性と知り 天 風写
秋鯖を待てずに天へ旅立ちぬ 天 仲春
秋鯖の骨が三本皿の隅 天 出船
【稲刈り】
稲刈りの終えて広さを知る田かな 天天地地地人人人 芝浜
稲刈りや親戚集いて無沙汰詫び 天天地人 雪童
稲刈りや再会笑う土と空 天天地人 出船
稲を刈る嫁に代りて赤子抱く 天地地地人 仲春
田の神にお礼を済ます稲刈り機 天地 音澄
稲刈り機あやつる腕のタトゥかな 天人 青羽
ハンドルとレバーで稲刈る農夫の手 天 風写
頬染めて黄金の稲を刈り初むる 天 好喜
稲刈りや山の荷車妻見えず 天 雪童
一夜明け確と風受く稲架の稲 天 磨角
★呑暮さんの選句とプチつぶやき-------------------------------------------
【宵闇】
天・宵闇に忍ぶ二人のスマホ灯
地・宵闇の帰路に肩押す夜風かな
人・宵闇やばくりと割れし胸の蓋
少し前まで新聞ではブログを「日記風のホームページ」、ツイッターを「簡易ブログ」などと注釈を入れていました。
今ではそんなことありません。スマホも俳句のキーワードになってきたなあと思った次第。
【秋鯖】
天・秋鯖を待てずに天へ旅立ちぬ
地・秋鯖やタマの出奔もう五年
人・山賊が山留守にする秋の鯖
いやー、鯖がそれほどのものかと思いつつ、そういう人もいるんだろうと。鯖をそこまで好きになれた人生。その生をまっとうし、鯖にさえ未練を残さずに逝けた。待てなかったというより、待たなかったのかもしれません。
【稲刈り】
天・稲刈りの終えて広さを知る田かな
地・稲を刈る嫁に代りて赤子抱く
人・逆光にダンダンとゆく稲刈り機
立って半畳、寝て一畳ですが、人を一人生かすにはどれくらいの田んぼが要るのでしょうか。
稲を刈った後の田んぼの広がりは、人間の命の面積でもある。人とはそれ以上でもそれ以下でもないのでしょう。
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