2013年12月アーカイブ


◯ 初冬の兼題は「冬休み」「生姜湯」「こたつ猫」です。

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【冬休み】
冬休み日経を読む十六歳        天天地地人人   仲春
東西の神のせわしや冬休み       天天地人     音澄
校庭に日差しのみある冬休み      天天       菫女
拍子木が月夜に響く冬休み       天地地人     好喜
冬休み巫女の装束愛娘         天地地人     魯斗
学び舎は空いた方舟冬休み       天地人      逆月
吐く息を追いかけ暮れる冬休み     天地       即馳
蝶番壊れたままや冬休み        天人       逆月
冬休み校門飛び出し右ひだり      天        雪童
からっぽの校庭目立つ冬休み      天       喜の字
先生がお母さんしてる冬休み      天        蝸牛

【生姜湯】
生姜湯に焼酎合わせて星の庭      天天天地     風写
生姜湯やつつがなきこと倦みて恥ず   天天天      菫女
生姜湯や解けぬ思ひと共に吹く     天天地人人人   逆月
生姜湯や向こうで父さん酒を足し    天天地      雪童
生姜湯や笑って済ますことにして    天地地地人    仲春
生姜湯を熱めに添えて妻の床      天地地人人人   風写
生姜湯を飲みつつ寺の句会かな     天人      喜の字
生姜湯は言わばカリスマ整体師     天        好喜

【こたつ猫】
出入りするたびにひと鳴きこたつ猫   天天地      音澄
回覧板ひとり留守番コタツ猫      天天       雪童
炬燵ネコ一尺四方の至福かな      天地地人     逆月
こたつ猫その子猫までこたつ猫     天地地      仲春
名を呼べばくぐもる返事こたつ猫    天地人      芝浜
じじばばと競って定席こたつ猫     天地       山女
冷えた足そっと探すやこたつ猫     天地       山女
握り合う手と手を見たりこたつ猫    天人人人人    音澄
ご隠居の顔してをりぬ炬燵猫      天人人     喜の字
こたつ猫愛す大佛次郎かな       天        仲春
こたつ猫呼ぶと尾を振り起きもせず   天        蝸牛
甚五郎手本にしたか炬燵猫       天        雪童


◯ つぶやき再録 ◯

★蝸牛さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【冬休み】
天 冬休み巫女の装束愛娘
地 冬休み日経を読む十六歳
人 ランドセル中をそのまま冬休み

天、大きくなったなあという感慨が伝わります。清純な衣装で、さぞかわいいのでしょうね。
地、受験を間近に、小論文の勉強でしょうか。面接の準備でしょうか。息子をちょっと頼もしくいとおしく見ている、親のまなざしが温かいです。
人、とても好きなんですが、そのまま夏休みにも言えてしまう感じが惜しいかな。生意気ですが。

【生姜湯】
天 生姜湯やつつがなきこと倦みて恥ず
地 生姜湯や向こうで父さん酒を足し
人 生姜湯や笑って済ますことにして

天、ああ分かります、この感じ。健康など、なくして分かる有難み。皆さんご自愛ください。
地、身体に良いんだか悪いんだか。「父は」でなく「父さん」というのが愛らしいです。
人、イライラするのは空腹や寒さのせいかも。おなかを温めて、いろいろ許したくなりました。

【こたつ猫】
天 名を呼べばくぐもる返事こたつ猫
地 出入りするたびにひと鳴きこたつ猫
人 握り合う手と手を見たりこたつ猫

天、猫飼いとしては、とてもよく分かります。眠そうな遠い声がとてもかわいいんですよね。
地、これもかわいい!寝ているところを起こされて不機嫌なのか、甘えているのか...。
人、この視点は他になかったですね。新しい。猫だけが知っている、なんて漱石みたいです。

★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【冬休み】
・蝶番壊れたままや冬休み      天
・吐く息を追いかけ暮れる冬休み   地
 
【生姜湯】
・生姜湯やつつがなきこと倦みて恥ず 天
・生姜湯や笑って済ますことにして  地
・生姜湯を啜り法話を続けをり    人
 
【こたつ猫】
・こたつ猫愛す大佛次郎かな     天
・こたつ猫その子猫までこたつ猫   地
・亡き父の席をせしめし炬燵猫    人

 「冬休み」の句ですが、自分のヘボを棚に上げていうと、冬休みを夏休みに替えてもあまり変わらない句は、避けました。で、「人」の句が選べませんでした。

 「生姜湯」の句に
・寒さ増す冬雷を聞く生姜湯よ
がありました。「寒さ」「冬雷」「生姜湯」と季語が並んでしまいましたね。
17文字しかないので、季節感を出す言葉を重ねない。そのために、季節感や風情を託す「季語」が選ばれ、集められてきたことを思い出して欲しいと思います。
俳句を始めたばかりの人に、いい? 季語は一つね、
・夏休み海水浴だ西瓜割り
こういうのはいけないんですよ、というようにしているのです。これも、季語が三つです。 生姜湯に酒を入れて飲むというのが、どうもね。そうですか? 酒があるならまっすぐそれを燗して飲めばいいと思うのですが。燗酒というのが冬の季語ですし。

「こたつ猫」は、たぶん世界が狭くなるぞと思っていたのですが、案の定でした。そこでどれぐらい意表を突くか、あるいは、猫を観察して詠むかを楽しみました。
俳句は写生とはいうモノの、少し場面転換の「ハッとする」ところを詠みたいと思っています。

★小間使いさんからのお知らせ----------------------------------------

俳号・好喜(こうき)さんという男性が初参加です。と、あるところで、名刺交換をしたとき、私の名刺の裏に書いてある「滅入る句会」会員、に目が止まってしまい、これはなんですか? 句会です、と、進んで、初参加になりました。初回でずいぶんいい点をもらっております。

新しい年も、よほどのことがない限り滅入る句会を続けます。変わらず、しつこく続けるつもりです。しつこくいい句を詠んで、しつこく投句してください。面白がって詠むと、俳句はかなり面白いです。もちろん、選句もよくよく吟味して楽しんでください。※小さな仕事ですが現役で仕事をしています。締め切りのあと、長い時間待てないことが多いので、容赦の時間を短くします。ぜひぜひ、良いお年を。


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