◯ 仲夏の兼題は「四十雀」「蜜豆」「梅雨空」です。
【四十雀】
四十雀樹間に音符撒き散らす 天天天天地 魯斗
新しき糠の仕込みや四十雀 天天天人 磨角
幼子と廚の仕事四十雀 天天地 磨角
晩婚の華やぐ朝や四十雀 天地人人 喜の字
四十雀黄帽子の子ら朝始む 天地人 菫女
鳴く声の針穴通すや四十雀 天人人 風写
四十雀同行二人古道かな 天人 雨不埒
その高音連れ呼ぶ声か四十雀 天 仲春
【蜜豆】
蜜豆を待つ頬杖の指白し 天天天天地地 仲春
みつ豆やせせらぎの音添えて出し 天天地人 雪童
蜜豆を木陰に分かつ老夫婦 天地人 風写
蜜豆を二つ買う日がまた来たの 天地人 音澄
みつ豆や信濃の水の美味きこと 天人人 喜の字
蜜まめに桃が入って母の味 天人 山女
蜜豆や三者面談終へてのち 天人 菫女
みつ豆や五十年後の初デート 天 喜の字
「ミツマメ!」と病床日記に妻記す 天 魯斗
みつまめやたまに謀反をおこす豆 天 好喜
【梅雨空】
梅雨空や遠近感の失せし街 天天天地地 魯斗
梅雨空に早や灯りたる花屋かな 天天地人 仲春
人事から封書が届く梅雨の空 天天地 酒倒
梅雨空の新冨士駅を通過中 天天 酒倒
梅雨空や昼も灯ともす楽屋口 天地地地人人 喜の字
七回忌終えて梅雨空光差す 天地地 好喜
梅雨空や鈍色濃くす石膏像 天地人 磨角
梅雨空や走る手にぎる姉妹かな 天地人 即馳
梅雨空にコールドゲームのやるせなさ 天人 音澄
★逆月さんの選句とつぶやきちょっと。---------------------------------
今回、梅雨空の天に唸っちゃいました。みなさまの評はどうか、失礼ながら、天5つというわけではないと思いますが、私メハ、唸りっぱなし。なぜこの句が自分でつくれなかったのかと慨嘆。というのも、この瞬間、このひととき、この状況が、大好きなのです。 新幹線、上り、新富士、晴れ、あまり忙しくない旅。西へ旅する。旅は始まったばかりで、心が浮き立っている。レールの音が体全体に心地よく伝わり、富士山が見えてくる。「新富士」という美しい響きが脳味噌を刺激する。なんという快感か。これを作ってくださった方、ありがとうございます!わが内にありながら、今まで句にしようと気が付かなかったのです。
【四十雀】
天 新しき糠の仕込みや四十雀
地 幼子と厨の仕事四十雀
人 路地奥の繁みに遊ぶ四十雀
【蜜豆】
天 みつ豆やせせらぎの音添えて出し
地 蜜豆を待つ頬杖の指白し
人 落語家のサインが壁に蜜豆屋
【梅雨空】
天 梅雨空の新冨士駅を通過中
地 梅雨空や昼も灯ともす楽屋口
人 梅雨空に早や灯りたる花屋かな
★喜の字さんの選句とつぶやき-------------------------------------------
【四十雀】
天・四十雀同行二人古道かな
地・四十雀持つや「自由」という切符
人・路地奧の繁みに遊ぶ四十雀
【みつ豆】
天・蜜豆や三者面談終へてのち
地・蜜豆や検診結果はさておきて
人・みつ豆やせせらぎの音添えて出し
【梅雨空】
天・梅雨空の新富士駅を通過中
地・梅雨空にはや灯りたる花屋かな
人・梅雨空や増えるばかりの常備薬
ひさびさに、つぶやきなんぞ。
四十雀。兼題を見た瞬時の句は・・・
・六義園吉保好みの四十雀
でも、なんだか古めかしい。六義園が柳沢吉保の下屋敷だなんてどうでもいい。
で、四苦八苦しましたよ。みなさんだって見たことないでしょ。
で、鳥類図鑑を開く。「胸にネクタイ」が見分け方とある。
たぶん、そのまんまの句が出てくるぞ。ほら、案の定です。
ネクタイ、アイビー、ソムリエ。だから、これらは俳句じゃないって!
もう、ひと捻りしていただかないと。あっ、投句以前の問題か。
みつ豆の「三者面談」。これおもしろかった。
生徒本人と保護者と先生。どの学校だったら受かる、かもしれない。ってやつでしょ。
そのドキドキ感の着地がみつ豆で癒やされるわけ。こういう生活句は好きですね。
ちなみに、小生の即吟は「みつ豆や夫に男の匂いなし」でした。
あっ、夫は「つま」と読んでください。
梅雨空。今句会でいちばん気に入った句が出てきてほっと安心です。
「梅雨空の新富士駅を通過中」
ひさびさの出張でしょうか。駅弁買って、缶ビール買って(えっ、缶ビール買わない?じゃぁ、大関のワンカップ)。で、弁当食べ終えた頃に世界遺産の富士山が見えるはずなの。
それが、梅雨空だもん!車窓からは濃霧だけ。くそっ!でしょう。楽しみは霧の中。
心中察するにあまりあり。で、俳句にしてみた。小生は天に抜きます。
このお題の即吟は「梅雨空や根岸界隈路地深し」。これ、別の句会にだした
「根津谷中昭和長屋の薄暑かな」の亜流です。それじゃだめでしょ・・・
と、ここまで書き進めてきたら・・・
近所の本屋さんが文芸誌2冊と月刊「俳句四季」を届けてくれました。
みなさ~~ん!なんとなんと、われらが宗匠様がですよ、
冨士真奈美選の特選句に。写真付きで紹介されていますですよ。
普段は、小間使い!などと仰っていますが、とんでもありません。
どんな句がですって・・・
それは雑誌をお求め頂き、じっくりと鑑賞なさってくださいな。
そんな意地悪せずに、宗匠玉句をご紹介いたしましょう。
・戦記読む閉じてまた読む夏さなか
参りましたです。
★小間使いさんから---------------------------------------------------
※喜の字様、どうも、ありがとうございます。
冨士真奈美選、は、なかなかもらえないだろうと覚悟していたので
思いがけなく選ばれて、かなり喜んでいます。
毎年8月のひと月「あの戦争」の本を読む習慣をどうしても
いつかは俳句にしておきたかった。それがかなった上に
特選になってフワフワしております。
では 次はもう晩夏ですね 小間使い
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