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めばちこ、めいぼ、ものもらいなどと呼ばれている、まあポピュラーな眼の病気は、正しくは麦粒腫・霰粒腫などというんだそうだ。あたしの場合は霰粒腫と診断された。
霰粒腫とは:まぶたの裏側が腫れ、時には赤くなる。通常、痛みやかゆみはない。美容的に悪くなることがある。マイボーム腺の出口がつまり、中に分泌物がたまったもので、麦粒腫(ものもらい)と異なり、通常細菌感染を伴わない。霰粒腫に感染を伴ったものを急性霰粒腫と呼ぶ。
【閲覧注意】...って遅いか。
で、近所の眼科医院を三軒ハシゴしたのだけれど、貰った目薬を注しても一向に快方に向かう兆しが無い。ついに隣市のクリニックへと越境治療に踏み切った。その治療体験ルポ、第一回。
デキル眼科医で霰粒腫を切開手術
目の周囲にデキモノができて、レンズが曇る。これでは生業であるパソコン仕事ができんではないか。そうでなくても受注が減って、米櫃の底が見えるようになってきたというに、一向に眼は快方にむかわない。しかし今日は腫れも引いていて症状の谷間である。ここを越すとまた来週酷くなってくるのは、この4ヶ月のローテーションから明白である。
も、もはや仕事をしないわけにはいかない。つうことはなんとか早急に治さなくてはならない。なにせ、米櫃の底が...である。というわけでマイホームタウンの眼医者に見切りをつけ、三軒目の眼科に診てもらうことにした。
電車に乗って三つ先の駅にあるこの眼科、ご近所の評判はすこぶる良い。が、高層ビルの中階フロアの一角に開業する、いわゆる「商業主義」の香りが漂うタイプの医者なのである。清潔で広いフロアに、余裕を持って配置された最新鋭治療設備に、美しいお姉さまナース多数、なのであり、元来貧乏性のわたしには、どうも肌があわん環境なのである。ま、さぞかし儲けてるのだろうと想像し、僻んでいるだけなのだが。
ところがなんとココ、わたしは初診ではないのだ。5年前のものだけれど、ちゃんと診察券も所持しており、カルテも残してある。院長の顔も覚えている。わたしより若いが、なかなかデキル感じの男なのである。会話も巧み、人柄も良く商売センスもあり、アタマも切れるなあという印象が残っている。(まあほとんどの医師たるもの、絵描き崩れのわたしよりゃアタマは切れるとは思うが...)
前にその眼科を訪れたのは、病気ではなく、ここらでイッパツ若返り!と、コンタクトレンズに色気を出したとき、メジャーチェーン店と合体して検査・処方を行っているのが、その眼科だったのである。ね、商業主義の香りが漂うでしょ。もっともそのとき作ったコンタクトレンズは、どうも合わなくて3ヶ月ほどで、うっちゃってしまったのだけれど。
受付で今までの経緯を看護婦に説明するのだが、読者の皆様はご存知の通り、これが長い。このコラムを開いて過去ログを読め、と言いたくなったがここは辛抱、説明をした。背水の陣なのだから。ただし途中で、「これと同じ話を先生にもう一度繰り返さにゃならんのですかァ...」とはカマシてやったが。
順番を待つしばしの間、美しいお姉さまがたの白衣から覗くおみ足をデジカメで撮影しようかと、カメラを出しかけたが、止めた。背水の陣なのであった。今回はもはや、飢饉に苦しむ百姓がお代官さまに直訴するような立場なのである。悪い印象を与えてはマズイのであった。
そして、名を呼ばれた。いよいよ直訴である
偏屈:「......というわけでして、先生になんとか助けていただこうと...」
いままでの病気の経緯をできるだけ大病のように練りまくり、哀れさを醸し出すようにコテコテに演出して訴えた。
医者:「じゃ、これらの目薬を処方していただいていたわけですね」
偏屈:「ええ、まあしかし全然快方に向かわなくてですね...」
医者:「う~ん、この目薬はちょっと違うと思いますね~だいたいこの腫れには目薬は効きません」
偏屈:「ほ」
医者:「あなたのは霰粒腫ですが、瞼の肉の中央にできるものですから目薬はそこまで届かないんですよ。ですから薬で治すなら飲み薬ですね」
医者:目の断面図イラストを見せて詳しく説明
医者:「それに、長期間注し続けられたので、目薬が○○っちゃってますね」(←○○部失念というか聞き取れず)
偏屈:「は」
医者:「これは取っちゃえばスグ治ります。いちばん最初のときに取っちゃえばよかったんですがね~」
偏屈:「しかし、ず~っと腫れが引くことがなかったもんで。今日が最近のベストといえるくらいなんですが」
医者:「腫れているときのほうが、取りやすいし痛くないんですが。ま、切っちゃいましょ」
偏屈:「はぁ」
医者:「あなたのおっしゃるように左目の上に3つと右目の上に3つ、右下にも1つありますが、うち2つは自壊してますから、これは切らなくても治るでしょう、こちらへどうぞ」(隣の椅子に移動。それが電動で倒れてフラットになる)
麻酔をして両眼をその場でザクザクッ!
医者:「まず左目の両端を切ります。出血が多いようなら眼帯をしますから、今日は右目は切りません。両目に眼帯できませんからね」
偏屈:「あの、ワールドカップが観られないというようなことは...」(←桂枝雀調)
医者:「それは、大丈夫ですよ(笑)。しかし先週金曜の午後はまいったなあ。患者が全然来なかった。ガラガラで」
偏屈:「ヒマだったら先生も観ちゃえばいいじゃないですか、テレビ」
医者:「ええ、でもま、そういうワケにも......(観たのね、やっぱり)、じゃ麻酔しますから、ちょっとイタむかもしれませんよ」
そら、来た、これだ。前の医者に脅されたヤツね。この際そんなこと言っちゃいられない。なにせ米櫃の底、だ。
医者:「あ、痛いですか?」
全然、痛くない。普通に腫れている状態のほうが痛いくらいである。
医者:「じゃ切りますよ」
「プツ、プツ、プツ、ゴリ、ゴリ、ゴリ、プツ、ゴリ」←メスの音
医者:「いや~痛いでしょ、なんかもう堅くなっちゃってて、すんなり取れない。腫れている時ならラクに取れるんですがね」
全然、痛くない。こりゃ金欠による飲酒の減少で麻酔が効くようになったのかなあ。...余裕が出てきた。なんか言うたろ。
偏屈:「堅くなってるって、木工用ボンドが固まったみたいな感じですか?」
医者:「上手いこと言いますねぇ...。まあそんな感じ...プツ、プツ、プツ、ゴリ、ゴリ、ゴリ、プツ、ゴリ」
偏屈:「前の ヤブ...先生は腫れてるときは切れないっ、てたんですがね」
医者:(もはや作業に没頭、聞いてない)「いや~堅くなってて、今日全部はムリだなあ。切っときますから次に残りを取りましょう。あまりやっても痛いでしょうし」
全然、痛くない。が、ムリしてワールドカップが観られなくなったらヤバイ。
偏屈:「はあ...、で、出血はどうですか? 今日右目もできますかね?」
医者:「大丈夫ですね。じゃ右目いきましょ」
この際、イッキに行ったほうがいいや。ワールドカップも観られるみたいだし、それに全然、痛くないし。
医者:「右目、麻酔しますよ」
偏屈:「お願いしま~す」
「プツ、プツ」
偏屈:「★!......!!」←なぜか右目はかなり痛い。こんなん反則でっせ!!
「プツ、プツ、ゴリ、ゴリ、プツ、ゴリ」
偏屈:「!......!...... 汗 ... 涙 ...」←体ガチガチ背筋ピン伸び
医者:「...はい、終わりました。続きは3日後くらいに取りましょう、すこしは柔らかくなるでしょうから」
偏屈:「...... 汗 肩コリ」
医者:「これで、スグ良くなりますから。はいツギの人」
というようなワケで、両目の上瞼をズタズタにほじくられて、本日の治療がさらりと終わった。「これでスグ良くなる」ってホントかね? じゃあいままでの試練と忍耐の4ヶ月はなんだったんだ、と。
三度目の正直? いやいやまだまだわからんテ。二度あることは三度ある。
目薬と消炎剤を処方してもらい、指定の薬局へクスリを受取りに行った。ソファーに座って待っていたら、ピンクの白衣を着た若く美しい薬剤師のネエちゃんが、ソファーの前までクスリの袋を持って来てくれたかと思うと、イキナリわたしの膝の前でペッタリと「ヤンキー座り」をして服用説明をしだしたのには、ぶったまげたぞ。
追い討ちをかけるようにカウンター横のソファーでは、もう一人の白衣のネエちゃんがプリンを食しておった。
世の中、カクジツにおかしくなってキテオル。第二回 につづく(2002-06-17 掲載記事を復刻)
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めばちこ、めいぼ、ものもらいなどと呼ばれている、まあポピュラーな眼の病気は、正しくは麦粒腫・霰粒腫などというんだそうだ。あたしの場合は霰粒腫と診断された。
霰粒腫とは:まぶたの裏側が腫れ、時には赤くなる。通常、痛みやかゆみはない。美容的に悪くなることがある。マイボーム腺の出口がつまり、中に分泌物がたまったもので、麦粒腫(ものもらい)と異なり、通常細菌感染を伴わない。霰粒腫に感染を伴ったものを急性霰粒腫と呼ぶ。
【閲覧注意】...って遅いか。
で、近所の眼科医院を三軒ハシゴしたのだけれど、貰った目薬を注しても一向に快方に向かう兆しが無い。ついに隣市のクリニックへと越境治療に踏み切った。その治療体験ルポ、第一回。
デキル眼科医で霰粒腫を切開手術
目の周囲にデキモノができて、レンズが曇る。これでは生業であるパソコン仕事ができんではないか。そうでなくても受注が減って、米櫃の底が見えるようになってきたというに、一向に眼は快方にむかわない。しかし今日は腫れも引いていて症状の谷間である。ここを越すとまた来週酷くなってくるのは、この4ヶ月のローテーションから明白である。
も、もはや仕事をしないわけにはいかない。つうことはなんとか早急に治さなくてはならない。なにせ、米櫃の底が...である。というわけでマイホームタウンの眼医者に見切りをつけ、三軒目の眼科に診てもらうことにした。
電車に乗って三つ先の駅にあるこの眼科、ご近所の評判はすこぶる良い。が、高層ビルの中階フロアの一角に開業する、いわゆる「商業主義」の香りが漂うタイプの医者なのである。清潔で広いフロアに、余裕を持って配置された最新鋭治療設備に、美しいお姉さまナース多数、なのであり、元来貧乏性のわたしには、どうも肌があわん環境なのである。ま、さぞかし儲けてるのだろうと想像し、僻んでいるだけなのだが。
ところがなんとココ、わたしは初診ではないのだ。5年前のものだけれど、ちゃんと診察券も所持しており、カルテも残してある。院長の顔も覚えている。わたしより若いが、なかなかデキル感じの男なのである。会話も巧み、人柄も良く商売センスもあり、アタマも切れるなあという印象が残っている。(まあほとんどの医師たるもの、絵描き崩れのわたしよりゃアタマは切れるとは思うが...)
前にその眼科を訪れたのは、病気ではなく、ここらでイッパツ若返り!と、コンタクトレンズに色気を出したとき、メジャーチェーン店と合体して検査・処方を行っているのが、その眼科だったのである。ね、商業主義の香りが漂うでしょ。もっともそのとき作ったコンタクトレンズは、どうも合わなくて3ヶ月ほどで、うっちゃってしまったのだけれど。
受付で今までの経緯を看護婦に説明するのだが、読者の皆様はご存知の通り、これが長い。このコラムを開いて過去ログを読め、と言いたくなったがここは辛抱、説明をした。背水の陣なのだから。ただし途中で、「これと同じ話を先生にもう一度繰り返さにゃならんのですかァ...」とはカマシてやったが。
順番を待つしばしの間、美しいお姉さまがたの白衣から覗くおみ足をデジカメで撮影しようかと、カメラを出しかけたが、止めた。背水の陣なのであった。今回はもはや、飢饉に苦しむ百姓がお代官さまに直訴するような立場なのである。悪い印象を与えてはマズイのであった。
そして、名を呼ばれた。いよいよ直訴である
偏屈:「......というわけでして、先生になんとか助けていただこうと...」
いままでの病気の経緯をできるだけ大病のように練りまくり、哀れさを醸し出すようにコテコテに演出して訴えた。
医者:「じゃ、これらの目薬を処方していただいていたわけですね」
偏屈:「ええ、まあしかし全然快方に向かわなくてですね...」
医者:「う~ん、この目薬はちょっと違うと思いますね~だいたいこの腫れには目薬は効きません」
偏屈:「ほ」
医者:「あなたのは霰粒腫ですが、瞼の肉の中央にできるものですから目薬はそこまで届かないんですよ。ですから薬で治すなら飲み薬ですね」
医者:目の断面図イラストを見せて詳しく説明
医者:「それに、長期間注し続けられたので、目薬が○○っちゃってますね」(←○○部失念というか聞き取れず)
偏屈:「は」
医者:「これは取っちゃえばスグ治ります。いちばん最初のときに取っちゃえばよかったんですがね~」
偏屈:「しかし、ず~っと腫れが引くことがなかったもんで。今日が最近のベストといえるくらいなんですが」
医者:「腫れているときのほうが、取りやすいし痛くないんですが。ま、切っちゃいましょ」
偏屈:「はぁ」
医者:「あなたのおっしゃるように左目の上に3つと右目の上に3つ、右下にも1つありますが、うち2つは自壊してますから、これは切らなくても治るでしょう、こちらへどうぞ」(隣の椅子に移動。それが電動で倒れてフラットになる)
麻酔をして両眼をその場でザクザクッ!
医者:「まず左目の両端を切ります。出血が多いようなら眼帯をしますから、今日は右目は切りません。両目に眼帯できませんからね」
偏屈:「あの、ワールドカップが観られないというようなことは...」(←桂枝雀調)
医者:「それは、大丈夫ですよ(笑)。しかし先週金曜の午後はまいったなあ。患者が全然来なかった。ガラガラで」
偏屈:「ヒマだったら先生も観ちゃえばいいじゃないですか、テレビ」
医者:「ええ、でもま、そういうワケにも......(観たのね、やっぱり)、じゃ麻酔しますから、ちょっとイタむかもしれませんよ」
そら、来た、これだ。前の医者に脅されたヤツね。この際そんなこと言っちゃいられない。なにせ米櫃の底、だ。
医者:「あ、痛いですか?」
全然、痛くない。普通に腫れている状態のほうが痛いくらいである。
医者:「じゃ切りますよ」
「プツ、プツ、プツ、ゴリ、ゴリ、ゴリ、プツ、ゴリ」←メスの音
医者:「いや~痛いでしょ、なんかもう堅くなっちゃってて、すんなり取れない。腫れている時ならラクに取れるんですがね」
全然、痛くない。こりゃ金欠による飲酒の減少で麻酔が効くようになったのかなあ。...余裕が出てきた。なんか言うたろ。
偏屈:「堅くなってるって、木工用ボンドが固まったみたいな感じですか?」
医者:「上手いこと言いますねぇ...。まあそんな感じ...プツ、プツ、プツ、ゴリ、ゴリ、ゴリ、プツ、ゴリ」
偏屈:「前の ヤブ...先生は腫れてるときは切れないっ、てたんですがね」
医者:(もはや作業に没頭、聞いてない)「いや~堅くなってて、今日全部はムリだなあ。切っときますから次に残りを取りましょう。あまりやっても痛いでしょうし」
全然、痛くない。が、ムリしてワールドカップが観られなくなったらヤバイ。
偏屈:「はあ...、で、出血はどうですか? 今日右目もできますかね?」
医者:「大丈夫ですね。じゃ右目いきましょ」
この際、イッキに行ったほうがいいや。ワールドカップも観られるみたいだし、それに全然、痛くないし。
医者:「右目、麻酔しますよ」
偏屈:「お願いしま~す」
「プツ、プツ」
偏屈:「★!......!!」←なぜか右目はかなり痛い。こんなん反則でっせ!!
「プツ、プツ、ゴリ、ゴリ、プツ、ゴリ」
偏屈:「!......!...... 汗 ... 涙 ...」←体ガチガチ背筋ピン伸び
医者:「...はい、終わりました。続きは3日後くらいに取りましょう、すこしは柔らかくなるでしょうから」
偏屈:「...... 汗 肩コリ」
医者:「これで、スグ良くなりますから。はいツギの人」
というようなワケで、両目の上瞼をズタズタにほじくられて、本日の治療がさらりと終わった。「これでスグ良くなる」ってホントかね? じゃあいままでの試練と忍耐の4ヶ月はなんだったんだ、と。
三度目の正直? いやいやまだまだわからんテ。二度あることは三度ある。
目薬と消炎剤を処方してもらい、指定の薬局へクスリを受取りに行った。ソファーに座って待っていたら、ピンクの白衣を着た若く美しい薬剤師のネエちゃんが、ソファーの前までクスリの袋を持って来てくれたかと思うと、イキナリわたしの膝の前でペッタリと「ヤンキー座り」をして服用説明をしだしたのには、ぶったまげたぞ。
追い討ちをかけるようにカウンター横のソファーでは、もう一人の白衣のネエちゃんがプリンを食しておった。
世の中、カクジツにおかしくなってキテオル。第二回 につづく(2002-06-17 掲載記事を復刻)